1989年10月

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11月から舞台「盲導犬」の稽古に入るんだ。相手役は桃井かおりさんと財津一郎さんでしょ。けっこう緊張してるよ。まだ抱負とかいえないけどさ、稽古に入ってからの蜷川さんの言葉と、自分の考えてることをかみ合わせてやってみたいと思ってる。よく役になりきるとかいうけどさ、初めての経験だから、完ぺきにできるかどうかなんてわからない。うまく言えないけど、TVとか雑誌とは違う世界でしょ。だから感覚がまだわからないんだ。

ボクの演じるフーテン少年って役はさ、20才ぐらいの設定なんだよね。セリフもカゲキなのがあったりするんだけどさ、カッコいい役だよ。今、まわりの友達にはいないタイプだね。不服従で、自分を持ってて、はっきりしてる奴。そういう役なんだ。蜷川さんに聞いた話なんだけど、フーテンっていうのは、作家の唐十郎さんが20才ぐらいのとき、理想としていた人間像なんだって。だから、どういう時代にも、みんなが憧れるような人物なんだよね。そういう唐十郎さんの理想に近づけるように演じたいと思ってる。自分でこういう役につくりあげたいっていうのはまだ言えないからさ、今言えるのは一生懸命に努力するってことだけだよね。

台本は40回ぐらい読んだけど、まだはっきりわからんないところあるよ。舞台とかあんまり観に行ったことないから、大きさとかわからないしね。岡本くんの「滝の白糸」は観に行ったよ。岡本くんが大きく見えて、スゲエなあって感じだった。今度は自分がそこに立つんだよね。岡本くんにね、舞台終わると顔が変わるぞって言われたよ。本当にそうなのかなあって感じだけど。初日の舞台が終わって幕が降りたときに、感動して泣けるぐらいにやりたい。自分がやったことに自分で泣けるって、すごくカッコいいと思うからね。

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記者会見のときに、蜷川さんや出演者の方達とお会いしたんだけど、蜷川さんってほかの人から話聞くと、おっかない人だっていうじゃない。でも、会って軽いアドバイスとか受けてみると、フツーの人だよ。だけど、やっぱり偉大だね。なんていうのかな、そういう雰囲気がまわりに漂ってるよ。

桃井さんはね、すごくきれいな人。今さ、ビデオで「前略 おふくろ様」っていう桃井さんの出演してた番組見てるんだけど、あのころとちっとも変らない。会見のとき、いちばん安心する言葉をかけてくれたのも桃井さんなんだよね。「緊張するでしょ」とか声をかけてくれてさ、「私もよ」って言ってくれたの。桃井さんの肩とかもふるえててさ、桃井さんがふるえるぐらいだからすごい作品なんだなって思ったよ。

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この前、少年隊のミュージカル観に行ったんだけど、舞台の裏って独特の雰囲気があるんだよね。今までは、忙しそうだな…とか、すごいメイクだな…とか思ってただけなんだけど、バスローブ着て、スリッパで歩いてる姿見てたら、自分とオーバーラップしてきちゃってさ。こういう世界に自分もかかわるんだなって思うと、見る目が変わってくるよ。

SMAPのほかのメンバーもさ、それぞれ責任を果たしてきたじゃない?吾郎は「青春家族」、森は「金八先生」、中居は「時間ですよ」でひとりの活動をしてきた。今度はオレがその責任を果たさなきゃなって思ってる。

ファンの子は、今までのオレとだいぶ雰囲気が違うから、エッ?とか思うかもしれないけど見に来てほしいね。今までのオレの中でいちばん大きな記念になると思うしさ、オレひとりの初めての思い出だからね。オレの思い出の写真を、みんなの頭の中のアルバムに貼ってもらえたらうれしいよ。